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■安心できない“先送り”
平成19年1月17日、自民、公明両党の幹事長、政調会長、国対委員長が会談し、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を通常国会には提出しない方針を確認した。この制度については以前のブログを見てもらえばわかるのだが、残業代不払いを合法化し、長時間労働を引き起こしてしまいかねないものであり、世論や野党から多くの批判を浴びていた。労働時間の規制を取り払うことでサービス残業が増加し、過労死などの労働災害を増加させてしまう懸念があり、中小企業や経営難の企業で働く労働者は特にその被害者になる可能性がある。この法案が、今月から行われる通常国会には提出されないこととなった。

ただ、これでホッとしてはいけない。これは“見送り”ではなく“先送り”である。夏の参院選への影響を考え、「とりあえず参院選が終わるまで待とう」という与党の考えだ。本当に良い制度だと思うなら、参院選があろうが何があろうが真っ向勝負すればいい。逆に「やはり悪影響が大きい」と思うのなら、この制度自体を白紙撤回すべきである。選挙をにらんで法案提出を見送るなんてよくあることなのだが、選挙によって導入が左右される法案なんて、本当に必要な法案なのだろうか。

現状、厚生労働省は国民に対して、この制度について具体的説明をあまり行っていない。対象の基本ラインとなる年収についても、同省が「年収900万円以上」と想定するのに対し、日本経団連が2005年に公表した提言では「年収400万円以上」とバラバラ。なぜその年収額に設定するのかも説明せず、批判を受けにくいラインをただ探っているだけ。これでは国民に伝わるはずがない。恐らく経済界の希望としては年収400万円位のラインなのだろうが、さすがにこれでは支持を得られないと思った厚労省が、慌てて年収900万円以上と試算して対象を絞った。対象を絞っておいて導入しやすくし、導入されてからその適用範囲を広げていこうという魂胆だろう。この現実を国民はもっと知るべきだ。ちなみに、対象の基本ラインを年収にすること自体、私は反対である。

■与党・経済界はなぜメリットをうまく使えないのか
もちろん、このホワイトカラー・エグゼンプションにはメリットが全くないわけでもない。前提としてこの制度を各企業にうまく浸透させることが条件となるが、たとえば、効率よく仕事を行うことによって、労働者は自由な時間を多く持つことができる。体調が悪いとき、あるいは家庭で用事があるときなど、個人の裁量で自由に退社・欠勤することができる。さらに、スキルのある労働者はより正当な報酬を受けることができる。それにより、自己啓発の促進につながっていくことも考えられる。もちろん、それらはスキルのある労働者に関してのこと。スキルの高くない労働者は長時間勤務を行うか、賃金の低下を余儀なくされる。

このように、批判の多いこの制度にも、内容や使い方によってはメリットが出ることもありえる。与党や経済界はこのメリットをうまく使い、より国民の支持を得やすい内容を提案すればよいのだが、なぜそれができないのか。それは、この制度に対して経済界からの変な期待があるからである。以前のブログにも書いたが、この制度は「賃金抑制」、「国際競争力強化」など、労働者の立場からではなく、企業・国の立場からの期待が強いのだ。少子化対策なんて間違いなく後付け。あくまで労働者のことを考えた法案ならこちらも考える余地があるのだが、導入に対する考えが企業・国の視点である以上、どうしても内容が企業・国寄りに偏ってしまう。これでは労働者が簡単に首を縦に振ることはないだろう。

■少子化に対する影響は
安倍首相は年始、この制度について次のような意見を述べた。「(ホワイトカラー・エグゼンプションによって増えることになる)家で過ごす時間は、例えば少子化(対策)にとっても必要。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ」。要約すると、安倍首相はこの制度が少子化対策のひとつになると考えているようだ。

もちろん、中には労働時間の短縮につながり、少子化対策に貢献する事例も出てくるのかもしれないが、これはあまりにも労働の現状を知らなさすぎる発言である。日本は世界で一番働いている国であり、週50時間以上働いている労働者の割合は28%とダントツで世界一。過労死の危険ラインと言われる月80時間以上の残業を行っているのは若手男性社員の4人に1人。サービス残業なんて当たり前の世の中だ。そんな中、残業代を支払っている企業ももちろんあるのだが、その企業もできるだけ残業代を払いたくないから「効率的に業務を行って早く帰れ」という態度をとる。その態度が、残業代ゼロになると「なんぼでも働いてもらって構わんよ」というものに変わる。それが労働時間の長時間化を引き起こし、労働者の健康状態を悪化させる。さらには成果主義によって、賃金の格差が大きくなってしまう。あくまで一例ではあるが、このような状況を引き起こすことだってある。

このようなワークライフバランスの崩壊によって、言ってみればこの制度は逆に少子化を引き起こす原因にもなりかねないのだ。一国の首相なら、もう少し様々な状況、メリット・デメリットを考えた上での慎重な発言をしてほしい。

■労働関連法案をめぐる今後の動きに注意が必要
このホワイトカラー・エグゼンプションは、労働側が求める残業代の割増率アップ、最低賃金法の底上げを図る法案とセットで国会に提出する予定だった。この2つは労働界からの要望で、ホワイトカラー・エグゼンプションは経済界からの要望。これらを“セット売り”することによって、「痛み分け」のような形で労使に納得してもらおうという考えだったのだ。各法案一つひとつに目を向けさせず、セットで考えてもらおうなんて、ちょっと考え方が甘いのではないか。

ホワイトカラー・エグゼンプションが、少なくとも1月からの通常国会へ提出されないことはほぼ間違いなくなったが、“セット売り”だったはずの他の労働関連法案は国会に提出される動きだ。これは労働側としては喜ぶべき状況に見えるが、実際は喜んでもいられない。これにより、経済界は政府・与党に多大なる圧力をかけてくるだろう。今回の国会提出見送りも、あくまで参院選への影響を恐れただけのことであって、法案自体は死んでいない。経済界を敵に回さないためにも、厚労省は秋の臨時国会以降に狙いを定め、法案提出に向けて全力で動いてくる。「高度専門職年俸制」などという、わけのわからん名前に惑わされてはいけない。この制度で苦しむことになるのは、あなたかもしれないのだから。

2007.01.23 | 世の中 | トラックバック(0) | コメント(0) |












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